音と私

忘れないように。語彙力皆無。

田中圭 舞台を観て

2021.08.21

もしも命が描けたら

東京芸術劇場プレイホール

 

13時〜と18時〜の公演を観劇。1日に2度同じ舞台を観ることが出来るとは。同じ公演内容とは言え、やはり一公演一公演全然違うよな、ナマモノだな、と感じた。久しぶりに画面越しではない芸術作品を身体いっぱいに感じて満たされまくった。たくさん心を動かされ、頭で考えて、クタクタになって、お風呂に入って布団の中、ぐっすり爆睡。こんなにクタクタになったのはいつぶりだろうか。しあわせだ。

 

プレイホールでの観劇は初。昼夜どちらも一階の後ろの方の席だったのだけど、段差がしっかりついていてとても観やすかった。

 

昼の部、少し早めに着席。緊張。うっすら見える舞台の様子は、セット(床)が円盤状で斜めになっていて、そこで立ち続けるの!?と少しビックリした。体幹鍛えてないと絶対つらい。そしてところどころ散らばるように置いてある岩のような塊。この塊が後々いろんなものに変身を遂げる。数分後ここにあの大好きな田中圭くんが現れるのかと思うとドキドキが高まった。

夜の部は母と共に観劇。圭くんがらみのイベントや舞台に付き添ってくれるのはいつも母。感謝。

昼には感じ取れなかったことや聞き取れなかったことを夜で少しずつ回収。ここから先に書くことが私が読み取れた内容で、きっと人それぞれ解釈の仕方が違うだろうし、全然わかってないじゃん!と思われてしまうかもしれない。他の方の感想や解釈も見てみたい気持ちと、全然わかってない自分に凹みそうなので見たくない気持ちとで今揺れている。笑

ただ比較的今回はとても見やすい内容だったように感じた。「素うどん」と圭くんが例えていたのがピッタリだなと。シンプルなものほど奥が深いと思うのよ。

 

暗転して音楽が流れる。YOASOBIの曲。素敵な世界観。わりとしっかり一曲分くらい流れてから、光に照らされた圭くん演じる月人が登場。青い色の繋ぎのお洋服。白い照明にその青がくっきりはっきり映える。

黒羽麻璃央くん演じる三日月登場。白黒のお洋服。演じてる姿を今まであまり拝見してこなかったのだけれど、舞台向き?の発声やイントネーションが上手だなって思った。(自分何様。)言葉がとても聞きとりやすかった。

自殺しようとしていた月人が失敗して生きている状態から物語がスタートする。三日月に月人が自分の今までの人生や思いの丈をひたすら述べる冒頭。ほぼ一人芝居。ここで、えええ?これいつまで続くの?まだ喋る?と膨大な台詞量に驚いて、圭くんスゴッ…となった。秤にかけた時の動きがなんかツボだった。

 

そこから時は戻り、どうして自殺しようと思うようになったのかの物語が続いていく。

ここで小島聖さん演じる星子さん登場。青いノースリーブワンピースに花柄かな?パキッとした色合いが綺麗。卑屈になっている月人に明るくて無邪気な笑顔で近づいて、こんな人身近にいたら好きになっちゃうよなと思いつつ、一歩間違えたらしつこくてめんどくさい人だよなとも思う。共通点や共感できることがあるというのはとても大きく強い。そしてそれが他愛のないことだったり、自分の人生の中での芯となるところだったり。性格が違ってもどこか繋がれるポイントがあるってなんとも心地よいもの。愛することを知って変っていく月人が微笑ましい。いつだって正面から真っ直ぐ月人に向かっていく星子さんはたまらなく愛おしい。こんなに幸せに包まれた日々に終わりが訪れるなんて。まさか星子さんが事故で亡くなるとは。ショッキング。いつか私の顔を描いて、と言っていた星子さん。人の絵は描かないという月人に「いつか」と言える星子さんすてき。最高に笑顔の瞬間を描こうと決めた月人。いつも悲しいことが起きる日には三日月が空にあって、だからこそ三日月の日にあえて描こうと決めた月人。なのにやっぱり三日月が出た日は悲しい出来事の日になってしまった。亡くなった星子さんを見つめ、笑っている星子さんを想像して絵を描いた月人…辛すぎた。星子さんの残したノートには月人への愛が溢れていた。私自身も祖母が亡くなった後に出てきた祖母のメモ帳に家族への愛が綴られていたことを思い出して胸がキュッとなった。

 

ここからまた冒頭の場面に戻る。星子さんの元へいきたい月人は首吊り自殺をしようとしたけれど、三日月は自分で自分の命を殺めた人は星子さんのいる場所へはいけないと言う。どうすればいいか問う月人に不思議な力を与えた。それは、渡されたスケッチブックに自分の命を削って別の命の絵を描くとその命が吹き返すというもの。例えば、弱っている虫を見てその虫が元気な姿を想像して描くとその虫はみるみる元気になっていく、というような感じ。星子さんに会うために一生懸命に命を描く月人の姿にとても心奪われてしまった。YOASOBIの曲と共に命を削りながらたくさんのいろいろな命を描くシーンは胸が熱くなった。

そこで出会った虹子さん。これもまた小島聖さんが演じる。一人二役すごい。出会ったばかりなのに一緒に居ると安心感がある…のはお母さんだったからなのね。きっとそうだろうなと会話の節々から感じていたけど、時系列的にどうなんだろう?と思ったのと、月人がすぐに気付かないのはなんでだろう?と思ったが、不思議な力が与えられているし、時間を遡ってきているし…うん、ここらへんがちょいと私には難しかった。

そして虹子さんが愛している陽介が現れる。三日月として登場していた黒羽くんが演じる。ここも一人二役?と思ったけど、どうなんだ?演者の人数が限られているから、陽介が登場するまでは三日月役を担ってくれてたってことでいいのかな?途中三日月が月人に対して「僕は君で君は僕だ」みたいな台詞があって最後にそういうことか!ってなったから、きっとそういうことだよな。それにしてもこの陽介のキャラが濃厚すぎる。シリアスな場面が多めなのに、ここで一気に特大のユーモアが足されて会場が笑いに包まれる。ここまでも所々ユーモアが散りばめられていてクスクスっとはしたのだけど。場を一気に明るくしてくれて、光陽介という名前の通りの人だなと思った。憎めないやつだ。

3択クイズ辺りのシーンは小島さんも圭くんも笑いを堪えきれてなくてそれがまたあったかい空気感が流れていいなと思った。張り詰めた空気が解ける瞬間ってとても安心する。3択クイズでは、昼は猫に雀が混じっていて、夜は猫にミッキーマウスが混じっていた。夜の部はここのアドリブが少し長めに。圭くんもミッキーやらされてた。笑

陽介と虹子さんが背負っているものを知り、陽介の余命を知り、月人は最後の命を削って陽介の命を描いた。今までは月人が星子さんに会いたいという気持ちで自分の為に描いていたのに、ここへきて誰かの為に愛する人の為に絵を描く月人の成長にめちゃくちゃグッときたし、でもいなくならないでほしい寂しさも押し寄せた。

10歳の月人を照らしていた三日月が30歳を超えた月人だということが最後にはっきりとわかる。いつの時も月人を見守っているのは月人自身だったんだ。ああ〜胸がいっぱい。

 

物語が終わり、昼夜共に鳴り止まない拍手の中、2度もカーテンコールで登場してくれた。2度目はスタンディングオベーション!鳥肌で泣きそうになった。

 

この日からなかなか余韻が抜けなくてずっとこの物語のことばかり考えてしまうし、改めて田中圭という役者はめちゃくちゃかっこいいではないか!と実感。声を枯らしながらも全力で演じる圭くんを見て、またもや好き度が高まってしまった。それに圭くんの声もとても好きなもんで、膨大な量の台詞のおかげでたくさん声が聞けたことも嬉しかったポイント!笑

 

そして舞台を観に行く度に思うのだけど、もっとちゃんと照明やってみたかったなーと。高校一年生の時、演劇部に入って照明を担当したことがあって。それがすごく楽しかったのよ。なのに、独特な部活の空気感に馴染みたくなくて、憧れていた女子高生としての楽しみ方をしたくて、放り投げてしまった。そこだけは後悔。今考えてみれば、別に空気に染まらずとも続けて、友達とも遊ぶ時間をどうにか見つければ良かったのに。そんなに器用じゃなかったんだよな。

 

これから先、月を見かけたら、この物語のことや月人のことを思い出してしまうのだろうな。翌日の夜に撮った月。東京公演最終日の空に浮かんだのは満月かな。

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世の中の状況がなかなか良い方向に進まず、本当に本当にもどかしい日々で、もちろんこの舞台へ行くことも迷ったけど、観に行けて良かったと思っている。そう思えるのも今何事もなく無事に健康に過ごせているからなのだけど。

ブログはすぐに書き留めていたのに、ずっと下書きのままになってしまっていた。もっともっと安心していろいろな芸術に触れられる日が早くやってきますように。